はじめに




ブイ!ブイ!八戸ブイヤベース!


八戸の冬は寒い。わたし自身は毎年寒いと感じるようになってからあわててコートを出したりしているくらいで、季節の変化には
無頓着に過ごしてきた。八戸ブイヤベースフェスタも今年で4回目。去年くらいからはその準備のソワソワで冬を感じるようになったと
今更振り返っている。

 漁師たちから、海の上は独特の気候だと聞いた事がある。その日の気温の他に海水温の影響で、体感的な暖かみや寒さを感じるそ
うだ。とはいえ、冬の海。想像するにとても厳しいものだろう。館鼻岸壁の奥の方、上には夢の大橋がどーんと見えるあたりに漁師たち
が漁具なんかをしまっておく小屋が連なっている。誰がいつから呼んだかは定かでないが、チロリン村なんて呼ばれていて、そこには
薪ストーブ用の薪がたくさん積んである。漁から帰った漁師たちが暖をとる姿が目に浮かんだ。やっぱり寒いんだろうなあ。
 冷たい海を住処にしている八戸の魚はキュッと身の締まったものが多い。その魚の泳ぐ姿はきっと、2月の外を歩くわたしとは違い?
きりっとして堂々としていることだろう。水揚げされた新鮮な魚の潤んだ瞳を見て美味しそう・・・なんて思うようになったのも、このフェスタ
のおかげだったりする。

 シェフたちは、その魚を捌き、余すところなく、お鍋にお皿に使い切る。ブイヤベースの醍醐味はスープにあるが、そこには魚のアラや肝を、
お店によっては丸ごとすりつぶして出汁をとっている。店に入るとすぐ、その出汁と、トマトやにんにくなどのいい香りと、暖かい湯気の感じで
たちまちお腹が鳴る。その日の一皿を想像すると、いてもたってもいられない。シェフは合間に料理や素材へのこだわりを話してくれる。店に
よって奥様だったり、サービスマンだったりするが、その人たちとの他愛のない会話も食欲に拍車をかける。その時間が温かくてすごく好き
だ。今日入っている魚を教えてもらい、いざ食べるとなると、その熱々の八戸ブイヤベースはなんとももったいないような気持ちになる。ワイン
のせいもあってか、帰る頃には外が寒いのなんてすっかり忘れていたりする。

 毎年思うが、漁師とシェフと、その間にも、様々な人が八戸の魚をいかしている。食べるわたしも、
その一員だという自負の下、今年もみんなとこのフェスタを楽しみたいと思う。
 4回目の今年は、八戸の魚を全て食べ尽くす勢いで。
「まだまだ行くぜ!八戸ブイヤベース。」
寒くて温かい、そして短い八戸の冬をご堪能いただきたい。

ブイ!ブイ!八戸ブイヤベース!

八戸ハマリレーションプロジェクト 河村 奈美子